偏差値

※本用語の解説は1992年に作成されたものです。

得点を,その分布の平均値が50,標準偏差が10となるように変換したもの。偏差値は,元の得点分布の平均値と標準偏差を用いて,


として算出される。つまり,平均値,標準偏差の異なる得点分布でも,偏差値に変換すれば少なくとも平均値と標準偏差だけはそろえることができ,異なった試験結果の比較がある程度可能となる。
偏差値から得られる厳密な情報は,各受験者の得点が平均値より上か下か,そして標準偏差を単位として平均値からどの程度離れているかだけである。例えば,偏差値が65であったすれば,その受験者は自分の得点が標準偏差の(65-50)/10=1.5倍だけ上(>50)に位置していることを知ることができる。
しかし,偏差値が広く用いられるている理由は,この情報によるのではない。それは,偏差値が受験者集団の中の順位に関する情報を少なくともある程度は与えてくれることによるのである。この順位に関する情報は,得点分布がーつの山をもち,かつ左右対称であれば正確さを増し,更に分布が正規分布で近似できるものであれば極めて正確となる。しかし,一般に,得点分布は様々な形状を示し,ましてや正規分布で正確に近似できるケースはまれである。そして,そのような場合には,偏差値の与えてくれる順位に関する情報は極めて粗っぼいものである。例えば,通常,偏差値は20~80の値をとるとされるが,分布によっては100を超えることも,負の値をとることもあるのである。
一般的な偏差値に対する理解は,この分布に関する仮定が抜け落ち,直接順位と結びついていることが多いと思われる。そして,場合によっては,偏差値が何か絶対的な学力の水準を意味するかのように受けとめられているケースさえある。偏差値は単に分布を平均値50,標準偏差10に変換するだけのものであり,多くの場合には,順位を与える情報としては不正確なものであることに注意が必要である。